東洋医学の基礎知識
・西洋医学と東洋医学の違い
西洋医学では血液やレントゲン・MRIなどの画像診断機器で検査をおこない身体の悪い場所や症状に対してエビデンスのもとに外科的手術や投薬などのアプローチを直接おこなっていく方法になります。
一方東洋医学は症状の原因となるものを薬や手術に頼らず人間が持っている本来の治癒力を最大限に活かして治していくアプローチになります。
また病気になる前の状態の事を「未病」といい東洋医学では未病の段階で鍼灸や漢方を用いて治療をすることにより未然に防いでいきます。
・東洋医学の治療方法
鍼、灸、指圧などを用いて経絡・経穴(ツボ)を刺激していきます。
経絡は身体の内すなわち五臓六腑と外を結ぶエネルギーの通り道、経穴は体内の様々な問題がでる場所かつ刺激により反応が出る場所になります。
電車に例えると経絡が線路で経穴が駅というのが解りやすいかと思います。
患者様の症状と体質に合わせて経絡(路線)の中から経穴(駅)を選定して刺激の方法と刺激の量を調節しながら施術をおこないます。
例えば急性期の症状には鍼治療が有効で慢性的な症状にはお灸が有効と言われています。鍼やお灸の刺激が苦手な方や経絡に沿って順番に刺激をしていく場合は指圧などがよく使われています。
経絡の種類
経絡は自身のエネルギーと深くかかわる督脈と任脈が含まれる奇形八脈の他と「肺、心、心包、大腸、小腸、三焦、脾臓、腎臓、肝臓、胃、膀胱、胆のう」それぞれ陰陽の属性に別れた正経十二経脈になります。
陰の経脈は中枢から抹消へ流れ陽の経脈は抹消から中枢へ流れます。
督脈(腹側を中心に通る経脈)
任脈(背中側を中心に通る経脈)
手の太陰肺経(胸部・鎖骨付近から親指の外側まで流れる経脈)
手の陽明大腸経(人差し指の内側から鼻翼の外側まで流れる)
足の陽明胃経(眼窩下縁から第2趾まで流れる)
足の太陰脾経(第1趾から側胸部まで流れる)
手の少陰心経(腋窩から小指の外側まで流れる)
手の太陽小腸経(手の内側から耳珠の内側まで流れる)
足の太陽膀胱経(内眼角の内側から第5趾の外側まで流れる)
足の少陰腎経(足底のから中心部に近い鎖骨まで流れる)
手の厥陰心包経(乳頭の外方から中指の先端まで流れる)
手の少陽三焦経(薬指の内側から眉毛の外側まで流れる)
足の少陽胆経(外眼角から第四趾の外側まで流れる)
足の厥陰肝経(第1趾の内側から乳頭線上の第6肋骨の高さまで流れる)
これらの経脈の中に経穴が存在します。
経穴の種類
経穴はWHOが定める定義では正経十二経脈、奇形八脈に加え奇穴をあわせて361個のツボが存在しています。
それぞれ症状や体質合わせて経穴を選択して刺激をおこないますが、その中でも特に臨床上で重要な経穴の事を要穴と呼んでいます。
要穴には五要穴、五行穴、五兪穴、八会穴、八脈交会穴(八宗穴・八総穴)四総穴、交会穴、下合穴が存在します。
その中でも診断、治療に対して臨床での使用頻度も高い五要穴を紹介していきます。
・原穴
元気の集まるところでその人の元氣が表れます。
例)合谷、太淵、大衝など
・郄穴
郄とは隙間の意味があり骨と筋肉の隙間をさします。郄穴とは退ける、つまりは「元の状態に戻す」「すみやかに邪を退ける」といった力を持つとされていて急性期の症状によく使われます。
例)水泉、外丘、陰郄など
・絡穴
絡穴とは本経脈と経脈が連絡するために分支する所にあります。
虚実(注1)が現れやすい場所で表裏する経脈を同時に治療ができるので慢性症状によく使われます。
例)飛揚、大鐘、内関
- エネルギーが不足して落ちている状態を虚証、病気に対して強く反応している充実した状態を実証といいそれを合わせて虚実
・募穴
臓腑の気が多く集まる場所で全て陰の部分で胸腹部に存在に存在します。陰は身体の内側(腹側)で陽は身体の外側(背側)を指します
例)期門(肝)、中府(肺)、壇中(心包)
・兪穴(背部兪穴)
臓腑の気が注ぐ場所で全て陽の部分で背腰部に存在します。膀胱の経脈にあり心包を除いて臓腑の名前がそのままつけられています。
例)肝兪、膀胱愈、厥陰愈
陰陽五行説
陰陽論とは対照する物事や事象を陰と陽の相反する二つに分けて分類をしたもので、お互いの過不足を補い合いながら存在しているというのが基本の考え方になります。
太陰太極図
五行論とは
木(成長、伸びやかな状態)
火(炎上、明るい、上昇)
土(成長と変化、農作物の植え付けと取り入れ)
金(変革、常に変化している状態)
水(潤下、潤し下に向かう状態) の五つの性質にわけてお互いの性質が助けあったり抑制しあったりしてバランスをとって存在している考え方です。
そしてこの考え方を身体に応用したのが五臓という考え方です。
木=肝臓 火=心臓 土=脾臓 金=肺 水=腎 の五臓に当てはめて診断と治療に役立てていきます。
これを元に感情であれば、木=怒り 火=喜び 土=思う 金=悲しみ 水=恐い
五窮であれば
木=目 火=舌 土=口 金=鼻 水=耳 と当てはめていきます。
五行色体表を元に、例えば怒りというストレスが多ければ肝臓は傷つき目に異常が出やすく、怖いというストレスがかかれば腎臓が傷つき耳に異常が出やすくなる、というように見立てをたてていきます。
この陰陽論と五行論を合わせたものを陰陽五行説といい現代の東洋医学の基礎となっています。
東洋医学と西洋医学は一見交わらないようにも思われがちですが、東洋医学における経穴(ツボ)と、西洋医学におけるトリガーポイントなどは類似している点も多くあります。
また西洋医学と東洋医学では、同じ症状に対してであっても基本の考え方が異なればアプローチや問題提起する対象も異なっています。
当院では東洋医学の観点と西洋医学の観点の両方の強みを活かしながら治療をおこなっています。
西洋医学で対応できないものは東洋医学を、東洋医学で対応できないものは西洋医学を用いながら患者様のお悩みの症状が少しでも改善していただけるように臨床に取り組んでいます。